親亡き後の信託の活用事例
ケース
AさんBさん夫婦には、知的障がいをもった子どもC君がいます。
また、近所にはBさんの妹Dさんが住んでおりC君の世話もよく見てくれ、C君もDさんになついています。
AさんBさん夫婦は、自分たちが亡くなった後の子どものことを考え、自分たちが亡くなっても子どもが不自由することなく暮らしていくにはどうしたらよいか、考えるようになりました。
何も準備していないと
このままAさんBさん夫婦が亡くなったら、どうなるでしょうか。
AさんBさん夫婦が亡くなった場合、C君がAさんBさん夫婦の財産を相続します。
AさんBさん夫婦が亡くなった時点で、C君が未成年であった場合、子どもの財産を管理する親権者が不在となるため、家庭裁判所が、未成年後見人を選任し、選任された未成年後見人が、C君の財産を管理することになります。
また、AさんBさん夫婦が亡くなった時点で、C君が成年に達していた場合で、知的障がいによりC君が自分で財産を管理する能力がないときには、家庭裁判所が、C君が有している能力に応じて、成年後見人、補佐人、補助人等を選任し、選任された成年後見人等が、C君の財産を管理することになります。
このようにAさんBさん夫婦が亡くなった後には、子どものために財産を管理する後見人等が選任されることが想定されますので、知的障がいをもつC君が1人で生きていかなければならない、ということはありません。
もっとも、家庭裁判所が選任する後見人等が、どのようにC君の財産(もともとはAさんBさん夫婦の財産であったもの)を管理するかについては、不透明な部分があります。
たとえば、AさんBさん夫婦が、
「自分たちが亡くなった後でも、子どもが不自由しない程度のお小遣いをあげたい。」
「子どもが好きなものを買うために財産を使って欲しい。」
と考えていたとしても、後見人等がそのように財産を管理するかどうかは分かりません。
親亡き後の信託での解決
こうしたAさんBさん夫婦の思いを叶えるために、信託を利用することが考えられます。
民事信託とは、資産を持っている人(委託者)が、信頼できる相手(受託者)に対し、資産を移転し、その受託者が特定の人(受益者)の為に、その資産(信託財産)を管理・運用・処分することをいいます。
民事信託では、所有する財産の一部を他の財産から切り分けた上で、受託者に対して、切り分けた財産の使い方を指定することができます。
上の図では、Aさんを委託者、C君を受益者、Dさんを受託者、現金を信託財産とする信託契約を締結しています。
AさんBさん夫婦の場合、その所有する財産から一定の現金(例:1000万円)を切り分けて、受託者Dさんに対し、この現金については、AさんBさん夫婦が予め定めた使い方をしてもらうよう指定することができます。
例えば
「信託財産から毎月一定額を支出して、子どもにお小遣いとしてあげる。」
「毎月一定の範囲で、子どもが喜ぶものを購入して子どもにあげ、その費用を信託財産から支出する。」
といったことを定めておくことが考えられます。
また、受託者には負担がかかるものの、受託者の報酬を定めておくことや、子どもが亡くなった後には、受託者の子が信託財産の残りを受け取れるようにしておくというように、負担に見合った対価を定めておくこともできます。
ぜひ民事信託をご活用ください
今回紹介したケースは親亡き後の信託の基本的な利用方法ですが、民事信託を活用することにより、自分が亡くなった後の子どもの生活について、一定の準備をしておくことができます。
また、信託契約でカバーできない子ども自身の財産や子どもの身上監護については後見を、親が設定しなかった財産の承継や未成年後見人の指定などは遺言で対応する必要があります。
当事務所では民事信託に精通した弁護士が、依頼者様が亡くなった後に残された子どものためにしてあげたいご希望に合わせて、信託・後見・遺言を組み合わせた最適な設定をご提案させていただきます。
初回相談は無料となっておりますので、ご自身が亡くなった後の障がいを抱えた子どもの生活についてお悩みの方はぜひご相談ください。