⑴ はじめに

親が認知症等になり、判断能力を欠くに至ってしまった後は、成年後見制度を利用せざるを得ません。
成年後見人は、家庭裁判所が選任するので、必ずしもご希望の人が成年後見人に就任できるとは限りません。
親が判断能力を欠く前であれば、任意後見という制度を利用して、将来、後見人になる人を事前に決めておくことができます。

⑵ 任意後見契約とは

任意後見契約とは、任意後見委任者(本人)が任意後見受任者(受任者)に対して、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その委託にかかる事務について代理権を与えるという委任契約です。
任意後見受任者は、1人でも複数でもよく、また法人がなることも認められています。
この任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によって締結されなければなりませんし(任意後見法3条)、任意後見監督人の選任がなされるためにはこの任意後見契約が登記されていなければなりません(任意後見法4条)。

⑶ 任意後見の開始

任意後見は、家庭裁判所による任意後見監督人の選任によって開始します(任意後見法2条1号)。
任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理弁識能力が不十分な状況にあるときに、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族または任意後見受任者の請求により任意後見監督人を選任します(任意後見4条1項本文)。
すなわち、親に判断能力があるうちに任意後見契約を作っておき、親に判断能力がなくなってしまった後に、家庭裁判に申立てを行い、任意後見の効力を発行させるということになります。
なお、任意後見監督人は、家庭裁判所が選任しますが、弁護士や司法書士が選任されることが多いです。
そして、任意後見監督人に対し、報酬を支払わなければなりません。この報酬は家庭裁判所が、本人の資産状況等と参考に決定しますが、「成年後見人」の報酬よりは低額になります。

⑷ ポイント

任意後見契約は、親に判断能力があるうちに、公正証書で作成する必要があります。
弊所では、公正証書の文案作成、公証役場の予約、公証人との折衝等の業務を行っております。
お気軽にご相談ください。

TOP