⑴ はじめに

資産家や、100%株主の会社経営者の中には、自身の財産の承継について、親族等に円滑に承継することを考えている方も少なくないかと思います。
自身の死後のことは遺言で対策していても、認知症対策まで行っている人は、そこまで多くはあありません。
仮に、何の対策も行わなかった場合、認知症等になり判断能力を欠くに至ってしまった後は、成年後見人を付けざるを得ません。
成年後見人は、財産の管理が主な職務なので、財産を客観的に減少させる行為を行うことができません。すなわち、将来の相続対策としての贈与ができなくなってしまうのです。
また、100%株主の会社経営者においていえば、成年後見人は、家庭裁判所が選任するので、会社の実情を知らない人が成年後見人になってしまった場合、株主総会において適切な議決権の行使ができず、公認役員の選任に大きな支障が出てします場合もあります。
しかし、認知症になる前であれば、任意後見制度を利用することによって、自身が認知症になった後の資産運用の方法を決めておくことができます。

⑵ 任意後見とは

任意後見契約とは、任意後見委任者(本人)が任意後見受任者(受任者)に対して、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その委託にかかる事務について代理権を与えるという委任契約です。

⑶ 後見事務の範囲

任意後見契約では、本人が受任者に委任したい後見事務の範囲を取り決めます。
後見事務の範囲は、任意後見契約公正証書において、代理権目録という形で、本人が受任者に委任し代理権を与えた後見事務が列挙されることが通常です。
代理権目録には、本人所有の全財産の管理・処分・変更に関する事項、金融機関・  保険会社・証券会社との取引、介護に関する契約締結・変更・解除および費用の支払いなど、本人が委任したい事務が記載されます。
この代理権目録に「贈与」「株主総会における議決権の行使」と記載し、それぞれに詳細な条件を付しておけば、認知症になった後も、相続対策や会社運営を滞ることなく、次期経営者にバトンタッチすることが可能です。

⑷ ポイント

任意後見契約は、親に判断能力があるうちに、公正証書で作成する必要があります。
弊所では、公正証書の文案作成、公証役場の予約、公証人との折衝等の業務を行っております。
お気軽にご相談ください。

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