コラム

2023/06/01

死後離縁について

 普通養子縁組の離縁の手続きについては、前回コラムで説明いたしました。

普通養子縁組の解消方法について
目 次 [close]1 養子縁組とは1.1 普通養子縁組1.2 特別養子縁組2 養子縁組を解消するには3 普通養子縁組の解消方法3.1 協議離縁3.2 調停離.....

 本コラムでは、離縁の当事者が死亡している場合の離縁の手続(死後離縁)について解説いたします。

死後離縁とは

 死後離縁とは、普通養子縁組をした当事者の一方が亡くなった後に、生存している他方が相手との親子関係を終了させる手続きです。

 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。

民法811条6項

死後離縁の手続き

 離縁をするには,市区町村役場に離縁の届出をしなければなりませんが、前述のとおり、死後離縁の場合は、あらかじめ家庭裁判所の許可を得る必要があります。

死後離縁許可の申立て

 死後離縁許可の申立先は、申立人の住所地を管轄する家庭裁判所となります。

 申立書の書式および記入例は下記裁判所のサイトをご参照ください。

 家事審判申立書

 記入例

 申立には、上記申立書の他に養親の戸籍謄本(全部事項証明書)、養子の戸籍謄本(全部事項証明書)が必要となります。

 なお、亡くなっている方の戸籍は、死亡の記載のあるもの(除籍、改製原戸籍)が必要となります。

 申立には収入印紙800円と予納郵券が必要となります。予納郵券は申立てる家庭裁判所ごとに異なりますので、詳しくは申立をする家庭裁判所にお問い合わせください。

審判確定後に確定証明を取得

 死後離縁許可の審判がなされた後、審判の確定を待つことになります。

※即時抗告(裁判所の決定に対する不服申し立ての一種)ができる審判は、確定しなければ効力が生じないとされています。(家事事件手続法74条2項)

 死後離縁をするについての許可の審判も即時抗告ができる審判となっているため(家事事件手続法162条4項)、審判が確定しなければ死後離縁許可の効力が発生しません。

 死後離縁許可の審判は、審判決定から2週間経過することで確定します。

 申立人は、所定の方法によって、審判をした家庭裁判所より確定証明書を取得します。

市町村役場に養子離縁届を提出する

 確定証明書の交付を受けた後、申立人の本籍地又は住所地の役場に届出をすることになります。

 届出には以下の書類が必要となります。詳しくは届出をする役場にお問い合わせください。

  • 審判書謄本
  • 審判確定証明書

死後離縁の効果

相続について

 既に発生した養親の相続は、死後離縁によって影響を受けません。

 他方、死後離縁の後に、養方の親族に相続が生じた場合は、相続権はありません。

親族関係

 養方との親族関係はなくなります。

 また、それゆえ、親族間の扶養義務も消滅します。

氏について

 氏については、原則として復氏する(元の姓に戻る)ことになります。

1.養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。

2.縁組の日から7年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。

民法816条

まとめ

 以上が死後離縁に関する基本的な内容となります。死後離縁についてご検討されている方は、ご相談ください。

弁護士 田中 彩

所属
大阪弁護士会

この弁護士について詳しく見る