解決事例 ~役員の会社に対する貸付金の相続~
事案の概要
依頼者Xは、取締役兼従業員としてY社で勤務していました(その後退職)。
Y社は親族会社であり、依頼者の兄であるAが代表取締役を務めていました。また、依頼者の母BもY社の取締役を務めていました。
依頼者Xの母Bが他界したところ、Bの遺産の一つに、Y社に対する貸金債権が存在しました。
依頼者Xは、この貸金債権を法定相続分の限度で相続したとしてY社に貸金返還請求を行いました。
Y社は、請求を拒絶しました。
そこで、依頼者Xは、Y社を相手方として、貸金返還請求の訴えを提起しました。
手続の流れ
依頼者Xは、Y社の役員を務めていたので、母BからY社に対して貸付金があり、それはY社の帳簿に短期借入金として計上されていたことを知っていました。
もっとも、訴訟当時、依頼者はY社を退職していたため、Y社の帳簿が手元になく証拠として提出することはできませんでした。
そこで、訴え提起後、Y社に対し、釈明を求め、過去の帳簿の提出を促しました。
Y社は、求釈明に応じて、過去の帳簿を裁判所に提出しました。
当該帳簿には依頼者Xが主張していた通り依頼者Xの母Bからの短期借入金が計上されていました。
これに対し、Y社は、親族会社だったので帳簿の処理が杜撰であり、実態の伴わない借入金を計上してしまっていた旨の反論を行いました。
しかし、Y社からはなぜそのような帳簿処理を行っていたのかという合理的な説明はなされませんでした。
訴訟は進み、当事者やY社の顧問税理士事務所の担当者の尋問が行われました。
尋問後、裁判所から和解の打診があり、請求金額の8割以上の水準の解決金が依頼者Xに支払われる内容の和解が成立しました。
コメント
本件のように、会社に金を貸し付けている役員が他界した場合、当該役員の会社に対する貸金債権は、相続の対象になります。
Y社は、当該貸金債権は、実態の伴わない会計処理であると反論していましたが、帳簿上、母BのY社に対する債権は明確に記載されておりましたし、Y社からは帳簿の処理について合理的な説明がなされなかったため、本件は勝訴的和解となりました。
債権を相続された方は、きちんと手続を取ることによって、本来、被相続人が請求することができたお金を、その相手方に請求することができます。
特に、本件のように、親族や親族会社に対する貸付けの場合、被相続人が生前、債務者に対して、貸金返還の手続をとっていないこともままあります。
債権を相続された方でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
弁護士 白岩 健介
- 所属
- 大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事
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