暗号資産(仮想通貨)と遺産分割
本コラムでは暗号資産(仮想通貨)が遺産分割の対象になるのかについて解説いたします。
遺産分割の対象となる財産と対象とならない財産
被相続人が保有していた財産の全てが遺産分割の対象になるわけではありません。
相続財産であっても、金銭その他の可分債権(例えば、貸金返還請求権、損害賠償請求権等)は、各相続人の法定相続分に応じて当然に各相続人に分割承継されるものと考えられているため、遺産分割の対象にはなりません。
もっとも、可分債権であっても、相続人全員が同意した場合は、遺産分割の対象とすることは可能であるとされています。
この点、預貯金債権については、以前は可分債権であるとして遺産分割の対象外とされていましたが、平成28年に最高裁判所の判例が変更され、預貯金債権は「相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である」(最高裁平成28年12月19日決定)との判断が示されたため、現在では、遺産分割の対象とされています。
仮想通貨は遺産分割の対象となるか
それでは、暗号通貨(仮想通貨)は、遺産分割の対象となるのでしょうか。
この点について、現在(2023年3月時点)において判例は存在しておらず、見解は分かれているようです。
もっとも、仮に暗号資産(仮想通貨)が可分債権と判断され、遺産分割の対象外となると考えられる場合でも、相続人全員が暗号資産(仮想通貨)について遺産分割の対象とすることに同意する場合は、他の可分債権と同様に遺産分割の対象となるものと考えられます。
弁護士 川並 理恵
- 所属
- 大阪弁護士会
大阪弁護士会消費者保護委員会
全国倒産処理弁護士ネットワーク会員
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