解決事例 ~進路変更に伴う事故~
事案の概要
依頼者Xは、片側5車線の道路の左から2車線目を走行していたところ、3車線目を走行していた相手方Yの車両と接触する事故が発生しました。
過失割合について折り合いがつかず、訴訟となりました。
本件の争点
本件事故の過失割合
当方の主張の骨子
自動車運転者は、他人に危害を及ぼさないような方法で運転する義務を負い(道路交通法70条以下「道交法」という。)、また、車両はみだりにその進路を変更してはならず(道交法26条の2第1項)、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなる恐れがある時は進路を変更してはならない(同条2項)。
相手方Yは、本件事故現場において、側道に進行するため、自身の進行していた車線から左側に進路変更をするにあたり、進路変更先の車線を依頼者X車両が走行しているにもかかわらず、安全確認を怠ったまま進路変更をし、その結果、相手方Y車両左側を依頼者X車両右側に接触させた。
そのため、本件事故は相手方Yの安全運転義務違反によって招来されたものである。
よって、依頼者Xと相手方Yの過失割合は、2対8とするのが相当である(名古屋地判平成27年(ワ)4312号、別紙判例タイムズ38【153】参照)。
相手方の主張の骨子
本件事故現場は、右に少し曲がっている交差点であるところ、依頼者Xが進行するにあたって右にハンドルを切りすぎた過失により、右後方から進行していた相手方Y車両に接触した。
そのため、本件事故の過失割合は、依頼者Xの方が大きい(明確な過失割合については言及無し)。
裁判所の判断(和解における心証開示)
裁判所は、本件事故の過失割合をX:Y=2.5:7.5として、当方の主張に近い心証を開示しました。
そして、この過失割合に基づき当事者間で和解が成立しました。
コメント
交通事故の訴訟においては、過失割合が争点になることが少なくありません。
本件においても、双方の主張は大きく食い違いました。
本件事故現場は、片側5車線の大きな道路であるだけでなく、緩やかに右に曲がる交差点を挟んだ後に片側6車線になるという特徴的な道路でした。
そのため、交差点を越えた後にどの車線を走行することが想定されているのかを明らかにする必要がありました。
そこで、当職は、実際の事故現場に行き、動画を撮影し、当該道路を走る車両の流れを証拠として提出しました。
この動画によれば、Xは、ほぼ直進で走行すれば足り、交差点を走行するにあたって、右にハンドルを切る必要性がないことが分かりました。
そうすると、Yが主張していた「Xが右にハンドルを切りすぎた過失」という主張は前提を欠くことになり、Yの主張は認められませんでした。
その結果、当方の主張に沿う心証が開示されたものと思われます。
事故現場を明らかにするためにグーグルマップが利用されるケースが増えていますが、グーグルマップは静止画なので車両の流れまでは分かりません。
本件のように、現地に行き、実際に動画を撮影することが、有力な証拠に繋がる場合があります。
当事務所は、ご依頼者様の権利を実現する為に、現地調査等の事案の特性に応じた適切な対応を行っております。
お困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。
弁護士 白岩 健介
- 所属
- 大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事
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