コラム

2023/03/13

認知請求について

 婚姻していない男女の間に生まれた子どもは、生物学上の父親との間に、法律上の親子関係は当然には生じません。このような場合に、生物学上の父親と子どもとの間に法律上の親子関係を生じさせる制度を認知といいます。

 養育費の請求や、その子どもが将来的に生物学上の父親の遺産を相続するには、法律上の親子関係を生じさせる認知手続が必要となります。

 本コラムでは、認知の手続について解説いたします。

認知とは

嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

民法779条

 婚姻している夫婦から生まれた子は、「嫡出子」として扱われ、戸籍上の届出が行われます。

 しかし、婚姻していない男女の間に生まれた子は「嫡出ではない子(非嫡出子)」として扱われます。母親と子の法律上の親子関係は出産の事実によって明らかですが、父親と子の法律上の親子関係は認知によって成立します。

 認知の手続きとして、子が胎児であるときは母親の承諾が、子が成人しているときはその子本人からの承諾が必要になります。

認知手続きの流れ

1.認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。

2.認知は、遺言によっても、することができる。

民法781条

 認知は、戸籍法の定めによる届け出、または遺言によってなされます。

子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、この限りでない。

民法787条

 父親が任意に認知しない場合、子本人のほか、直系卑属、法定代理人は認知の訴えを提起することができます。

 このように、父親が自発的に認知をすることを「任意認知」といい、裁判所への訴えによって認知を求めることを「強制認知」といいます。

任意認知

 子の父が届出人となります。遺言による認知の場合、遺言執行者が届出人となります。

 認知届は、認知する父もしくは認知される子の本籍地、または届出人の所在地の市区町村役所に提出します。胎児を認知する場合は、胎児の母の本籍地の市区町村役所が提出先となります。

 任意認知に、届出期限はありませんが、先述の通り、子が胎児であるときは母親の承諾が、子が成人しているときはその子本人からの承諾が必要になります。遺言による認知の場合、遺言執行者は、その就任の日から10日以内に、認知届を出す必要があります。

 任意認知の必要書類・持ち物は以下となります

  • 認知届:役所の窓口で用紙を入手可能です。
  • 届出人の本人確認書類:運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどです。
  • 戸籍全部事項証明書:認知する父、認知される子の本籍地以外で届け出をする場合に必要となります。
  • 承諾書:認知される子が成年の場合は認知される子の承諾書が、胎児を認知する場合は胎児の母の承諾書が必要となります。
  • 遺言の謄本:遺言による認知の場合に必要です。

 届出人である父の印鑑が必要となる市区町村役所もあるので、提出前に確認されることをおすすめいたします。

強制認知

 父親の意思に基づいた「任意認知」が期待できない場合、父親の意思に関係なく強制的に認知を実現する方法があります。これを「強制認知」といい、裁判所が認知の可否について判断します。

 なお、認知については調停前置主義がとられていて、訴えを提起する前にまずは家庭裁判所で調停を申し立てなければなりません。ただし、父親が死亡した後の認知は、調停前置主義の例外として、調停を行わずに認知の訴えを提起することになります。

認知調停

 認知調停は、基本的に相手方の現住所を管轄する家庭裁判所に申し立てます。ただし、当事者の合意がある場合には別の家庭裁判所に申し立てることもできます。

 申立て費用は、収入印紙1,200円と郵便切手代が必要となります。郵便切手代は、金額や種類が裁判所ごとに異なりますので、事前に申し立てを行う家庭裁判所に確認されることをおすすめいたします。また、親子関係の存否を明らかにするため、費用10万円前後のDNA鑑定を行うことが一般的です。この場合、原則として申立人が鑑定に要する費用を負担します。

 申立てを行えるのは、子ども本人、子どもの直系卑属、子どもまたは子どもの直系卑属の法定代理人です。

 認知調停に必要な書類は以下となります。

  • 申立書とその写し1通
  • 子供の戸籍謄本
  • 父親の戸籍謄本
  • 子供の出生証明書の写し、母親の戸籍謄本(婚姻を解消してから300日以内に生まれた出生届をしていない子どもに関する申立ての場合)

 家庭裁判所に申立書が受理されると、裁判所から初回の調停期日が指定されます。

 調停期日では、調停委員が申立人と被申立人である父親の双方から話を聞きながら手続きを進めます。なお、手続の最中はできるだけ当事者同士が顔を会わせることがないように配慮されています。

 1回の調停期日で話し合いがまとまらない場合、次回以降の期日が1か月~2か月に1回程度のペースで開かれます。

 調停で合意に至れば、合意に従った審判がなされ、裁判所から審判書謄本が郵送されます。異議申立期間が経過した日に審判が確定し、確定証明書を家庭裁判所に申請して取得することができます。

 なお、異議申立期間は、異議申立権者が審判の告知を受ける者であるときはその者が審判の告知を受けた日(審判書謄本を受け取った日が一般的です。)の翌日から、審判の告知を受ける者でないときは当事者が審判の告知を受けた日の翌日から起算して2週間です。

 審判確定日から10日以内に役所に認知届、審判書謄本、確定証明書を提出しなければなりません。

 認知調停を申し立てても、相手方が調停期日に出席しない、もしくは認知の合意を得られない場合は調停不成立となります。

認知の訴え

 認知調停が不調に終わった場合、原告又は被告の住所地を管轄する家庭裁判所に、「訴状(正本、副本各1通)」、「原告、被告の戸籍謄本」のほか主張を裏付ける証拠書類を添えて認知の訴えを提起します。

 認知の訴えでは、裁判官が、当事者の主張や証拠に基づいて、認知するかどうかを判断します。

 裁判で和解した場合は和解調書の謄本、判決に至った場合は判決謄本と裁判の確定証明書を取り寄せ、認知届とともに裁判の確定日から10日以内に役所に提出します。

まとめ

 認知は、子どもと父親の法的な親子関係を発生させる重要な手続です。認知手続でお悩みの方は、ご相談ください。

弁護士 田中 彩

所属
大阪弁護士会

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