親亡き後の障がいを抱えた子どものための任意後見契約について
子どもが知的障害や精神障害を抱えている場合、親が元気なうちは親自身が子どもの生活を支えることができますが、親の死後または身体能力や判断能力が低下した後は、子どもの世話をする人がいなくなってしまいます。その際、子どもの財産管理や身上保護事務等は誰がどのように行うのでしょうか。
子どもが不自由なく平穏に生活していけるよう、親はまだ自身が元気なうちに、この親亡き後の問題に対して備えておくことが重要となります。
本コラムでは、任意後見契約を活用して親亡き後の問題を解決する方法についてご説明いたします。
目 次 [close]
子どもによる任意後見契約の締結
1 障がいを抱えた子どもに任意後見契約を締結する意思能力がある場合
子ども自身が信頼できる第三者を任意後見受任者として、任意後見契約を締結することができます。子どもが未成年の場合も、親権者の同意を得ることにより、自ら任意後見契約を締結することができます。
親が元気なうちは、子どもの世話を親自身において行うことを希望するのが通常であるため、任意後見契約締結後すぐに発効させるのではなく、親の死亡または、身体能力・判断能力低下後に、任意後見受任者が任意後見監督人の選任を裁判所に申立てるという方法もあります。
任意後見契約が発効した後は、子どもは任意後見人の保護を受けることができます。
2 子どもに任意後見契約を締結する意思能力がない場合
この場合は、子ども自らが任意後見契約を締結することはできません。しかし、子どもが未成年の場合は、親権者が代理して任意後見契約を締結することができるとされています。
親による任意後見契約の締結
親が自己を当事者として第三者と任意後見契約を締結し、自己の財産から子どものために生活費を支出する等、財産の処分についての条項を盛り込むことが可能です。これにより、親の判断能力が低下し、子どもの世話が難しくなったとしても、任意後見契約の終了までは子どもの保護を図ることができます。
また、親による任意後見契約において、任意後見受任者に子どもについての法定後見開始の申立手続を行わせることを委任事項とすることも可能であるとされています。
任意後見契約以外の制度の利用について
子どもが成年であり、判断能力がすでに減退している場合には、任意後見制度ではなく法定後見制度を利用することも考えられます。
法定後見は裁判所を利用する手続きで、裁判所へ申立てをして後見人を選任してもらう必要があります。親自身が後見人の候補者として裁判所へ希望を申し出ることもできますが、後見人は家庭裁判所の職権で選任されるため、就任できるとは限りません。
親亡き後が問題となる場合は、弁護士等の第三者が後見人に選任される可能性があります。
また、後見制度ではなく、民事信託という手続きもあります。こちらについては親亡き後の子どものための民事信託(家族信託)~遺言・任意後見・成年後見との違いや関係は?~ をご参照ください。
弁護士 小西 憲太郎
- 所属
- 大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事
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