コラム

2020/11/16

マッチングアプリでのトラブル ~相手に独身者であると偽られ交際に発展するケース~

マッチングアプリによるトラブルの増加

 近頃、マッチングアプリに関するトラブルが増えています。

 例えば、男性が、既婚者であるにもかかわらず、独身者(未婚者)と偽ってマッチングアプリに登録し、女性と交際に及ぶケースが考えられます。
このような場合、知らないうちに既婚者と交際してしまった女性は、交際相手の男性の妻から不貞行為を行ったとして、慰謝料を請求される可能性があります。

 この慰謝料請求の根拠は、民法709条に規定されている不法行為責任です。

 民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定されています。

 すなわち、権利を侵害することについて、「故意又は過失」が必要なのです。

不貞行為における「故意又は過失」とは

 不貞行為における「故意又は過失」は、相手が既婚者であることを知っていた又は既婚者であることを予見できたにもかかわらず予見を怠った場合に認められます。

 ですので、マッチングアプリで出会った男性が既婚者であったとしても、既婚者であったことを知らず、また知り得なかったと反論できれば、男性の妻からの慰謝料請求を阻止することが可能となります。

 この際、当事者の年齢や地位、マッチングアプリの登録情報、連絡の頻度及びその内容、一緒に出掛けた場所・時間・曜日などが重要な証拠になります。

身分を偽った男性に対する慰謝料請求

 既婚者であるにもかかわらず独身者(未婚者)であると身分を偽っていた男性に対しては、貞操権を侵害されたとして、慰謝料を請求できる可能性があります。
「貞操権」とは、性的な自由に不当な干渉を受けない権利ないし純潔を侵害されない権利といわれています。

 この際の慰謝料の相場は30万円~300万円程度とかなり幅が広くなっています。

まとめ

 男性の妻からの慰謝料請求を争う場合も、男性に対して慰謝料請求する場合も、証拠が重要になりますので、マッチングアプリ上でのやり取りや、LINE等、SNSでのやり取りは、その内容を保存しておくことをお勧めします。

弁護士 白岩 健介

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事

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