コラム

2022/07/04

示談交渉による交通事故解決③ ~示談書の作成~

 示談は特に専門家の関与や特別な手続がなくても、当事者の話し合いがまとまれば成立します。しかし、示談の内容(示談条件)について、後日紛争の蒸し返しが起こらないように注意する必要があります。

 また、執行認諾文言付の公正証書を作成する、訴え提起前の和解手続きを行うなど、債務名義を取得しておくことも検討すべきです。

示談書の作成

 示談書は、一般的には、当事者分の通数を、当事者双方が記名捺印し、作成します。

 加害者からの賠償金支払だけを合意すれば足りる場合などは、免責証書として、加害者の損害賠償義務について合意した額を超えて請求しないという被害者の免責の意思表示のみを文書化する形式をとることもあります。

 被害者側にのみ弁護士が選任されている場合には、加害者側の示談代行者である保険会社が免責証書を作成し、被害者側がその記載事項を確認して記名・捺印するか、被害者の代理人である弁護士が示談書を作成することが一般的です。

示談書の記載事項の概要

当事者

 事故の当事者である加害者・被害者を、住所・氏名で特定します。加害者以外にも損害賠償義務を負う者がある場合や、被害者が死亡してその相続人が複数人である場合などは、その全員の住所・氏名を記載します。相続人については相続関係がわかるように被害者との身分関係を明示しておくことがあります。

 当事者が複数人いる場合は、当事者として表記しておかなければ、示談の効力が及びませんので、注意が必要です。

事故の特定

 事故が発生した日時、場所、事故車両(登録番号・車種形式・所有者)、運転者、事故の状況を記載して特定します。自動車安全運転センターが発行する交通事故証明書の記載から確認するのが通常です。

被害内容

 死亡事故か、傷害事故か、物損のみかという損害の内容を記載します。傷害であれば診断名や後遺障害の内容を記載します。

示談内容

賠償金額の総額、賠償金額の内訳(必要に応じて項目や過失割合)、支払期日や違約金等の支払条件等を記載します。

 自賠責保険や一時金を被害者が示談成立前に受け取っている場合に、賠償金額はその金額を含まないとするならば、既払分としてとしてその内容を明示しなければ、後からその金額の扱いについて紛争が生じますので、示談の内容にはその金額を含むかどうかも明確にしておく必要があります。

放棄条項・清算条項

 示談内容以外の請求権を被害者が放棄する旨の条項(放棄条項)や、示談内容以外の債権債務がない旨の条項(清算条項)を記載することがあります。示談成立後に紛争が生じないように約束する趣旨で、これらの条項が記載されます。

示談成立年月日

 示談が成立した年月日を記載します。

その他の条項

 状況によって、加害者が謝意を示す趣旨の条項を加えたり、示談時に予期しない後遺障害が発生した場合には別途協議する旨の条項等を記載することがあります。また、物損と人損(人的損害)で別の示談書を作成するなど、全損害のうちの一部についてのみ示談する場合にはその旨を明記します。

当事者の署名・捺印

 最後に当事者全員が署名・捺印します。当事者が未成年者である場合には、法定代理人である親権者が署名・捺印することになります。

小西法律事務所

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