外国送達について
目 次 [close]
- 1 はじめに
- 2 外国送達の根拠
- 3 外国送達の種類
- 4 外国送達の注意点
- 5 外国公示送達
- 5.1 ①被告が外国にいるが、住所、居所その他送達すべき場所が知れない場合(民訴法110条1項1号)
- 5.2 ②民訴法108条の規定による外国送達ができない場合(民訴法110条1項3号前段)
- 5.3 ③ 民訴法108条の規定によっても送達ができないと認めるべき場合(民訴法110条1項3号後段)
- 5.4 ④ 民訴法108条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後6カ月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合(110条1項4号)
- 5.5 ⑤ 民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約15条2項の要件が満たされた場合(民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続きの特例等に関する法律28条)
- 6 まとめ
はじめに
外国にいる者を相手方として、日本で裁判や調停を行う場合、当該外国にいる相手方に対して、訴状や申立書の送達を行わなければなりません。
これを外国送達といいますが、外国送達にはいくつかの種類があります。
外国送達の根拠
外国送達は、外国にいる者に対して送達を行う手続きなので、当該外国の協力が不可欠です。
その協力の根拠は、日本と当該外国との間で条約を締結している場合はこれらの条約を根拠として、条約を締結していない場合は、二国間の取決め・協定に基づき、それもない場合には個別の司法共助によって行われます。
また、民事訴訟法(以下「民訴法」といいます。)108条には、外国においてすべき送達は、裁判長がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してする、と定められています。
外国送達の種類
①領事送達
原告⇒訴えの提起⇒受訴裁判所⇒最高裁判所⇒外務省⇒外国に駐在する日本の領事館等⇒被告
領事送達は、日本の機関が送達を行うので、他の送達方法による場合よりも送達が早くて確実性があり、かつ、送達の相手方が日本語を解する場合は翻訳文の添付は必要ありません。
しかし、任意の送達しかできないため、送達の相手方が受領を拒んだ場合は、別の強制的な送達の手続をやり直さなければならないというリスクがあります。
②指定当局送達
原告⇒訴えの提起⇒受訴裁判所⇒最高裁判所⇒外務省⇒外国に駐在する日本の領事館等⇒受託国(送達の相手方が所在する外国)の指定当局⇒受託当局⇒被告
③中央当局送達
原告⇒訴えの提起⇒受訴裁判所⇒最高裁判所⇒受託国の中央当局⇒送達実施当局⇒被告
④管轄裁判所送達
原告⇒訴えの提起⇒受訴裁判所⇒最高裁判所⇒受託国の管轄裁判所⇒被告
⑤民訴条約に基づく外交上の経路による送達
原告⇒訴えの提起⇒受訴裁判所⇒最高裁判所⇒外務省⇒在外大使等⇒受託国の外務省⇒受託当局⇒被告
外国送達の注意点
翻訳文の添付
日本語を解することが明らかな者に対して領事送達を行う場合を除き、送達すべき文書の翻訳文を裁判所に提出する必要があります。さらに、指定当局送達の場合は、翻訳が正確である旨の証明が必要です(受託国の日本大使館が行うことが多いです。)。
これは、訴状も証拠も全てにおいて必要であるため、場合によっては、訴状の記載をシンプルにする等の工夫が必要です。
送達に要する期間
送達先の国や送達方法によっても異なりますが、数カ月から1年程度かかる場合もあります。
外国公示送達
上で説明した外国送達は、外国における相手方の所在地が分かっている場合に採られる方法であり、相手方の所在地が分からない場合は、一定の要件を満たせば、公示送達ができる場合があります。
公示送達を行う場所はあくまでも日本国内であり、外国の裁判所等で行うわけではありません。
もっとも、国内の公示送達は、掲示を始めた日から2週間の経過により送達の効力が生じますが、外国公示送達の場合は、6週間の経過によって送達の効力が生じるとされています(民訴法112条2項)
①被告が外国にいるが、住所、居所その他送達すべき場所が知れない場合(民訴法110条1項1号)
- 被告が外国人の場合
被告が外国にいることを確認した上で、外国における住所地が不明である旨の調査を行う必要があります。
入国管理局に対して、弁護士会照会制度を利用して、当該外国人の出入国歴及び外国人登録原票を調べます。同票には、外国における住所又は居所が記載されています。ここで確認した住所地にエアメール等を送り、現住所に郵便物が届くか否かを確認します。
※なお、平成24年7月9日より、外国人登録制度は廃止されております。 - 被告が日本人の場合
入国管理局に対して、弁護士会照会制度を利用して、当該日本人の出入国歴を調べます。
そして、外務省領事局政策課に対して、弁護士会照会制度を利用して、当該日本人の在留先の住所を調査します。ここで確認した住所地にエアメール等を送り、現住所といえるか否かを確認します。
※なお、事件の内容や相手方が所在する外国によっては、現住所を特定できない場合もございます。
②民訴法108条の規定による外国送達ができない場合(民訴法110条1項3号前段)
送達先の外国と日本との間に国際司法共助の取決めがなく、当該外国の管轄官庁が日本からの送達の嘱託に応じない場合や、当該外国に日本の大使等が駐在していない場合等です。
③ 民訴法108条の規定によっても送達ができないと認めるべき場合(民訴法110条1項3号後段)
外国との間の取決め上、送達の嘱託は可能だが、当該外国における天変地異や戦乱等により嘱託しても送達不能が見込まれる場合や、外国に送達の嘱託をしたが、何らかの理由で送達できず、再度の送達嘱託をしても送達できる見込みがない場合等です。
④ 民訴法108条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後6カ月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合(110条1項4号)
外国送達がなされたが、奏功しなかった場合の規定です。
⑤ 民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約15条2項の要件が満たされた場合(民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続きの特例等に関する法律28条)
条約上の方法によって文書が転達され、文書の発送から6か月以上の期間が経過し、かつ、すべての妥当な努力にもかかわらず、受託国の権限ある当局から送達証明の入手ができない場合です。
まとめ
以上のように、外国にいる者を相手方として訴訟等を行う場合、特別な手続を経る必要があります。
国際離婚や、渉外取引等に基づく損害賠償請求等、外国にいる者に対して、訴訟等を行わざるを得ない方も少なくありません。
弊所では、このような案件も多数取り扱っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
弁護士 白岩 健介
- 所属
- 大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事
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