交通事故による損害額の算定④ 〜死亡による逸失利益〜
交通事故における損害賠償は主に積極損害、消極損害、慰謝料の3つに分けることができます。
そのうち消極損害とは、事故にあわなければ将来得られたであろうと考えられる利益を失ったことによる損害をいいます。消極損害は、更に休業損害と逸失利益の2つで構成されます。
逸失利益とは
逸失利益とは、事故がなければ被害者が将来得られるであろう経済的利益を失ったことによる損害です。
逸失利益には、後遺障害による逸失利益と死亡による逸失利益があります。
死亡による逸失利益
死亡による逸失利益は、基本的には後遺障害逸失利益と類似し、いわば後遺障害により労働能力が100%失われた場合と考えられます。
後遺障害による逸失利益の場合と相違しているのは、被害者が死亡していることから、生活費の支出を免れた利益分の調整のため、生活費控除を行う点です。
算定方法
*「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」については、後遺障害逸失利益と同じく、有職者または就労可能者については、67歳までの稼働期間に対応するライプニッツ係数によるのに対し、18歳未満の未就労者の場合は、事故時から67歳までのライプニッツ係数から18歳に達するまでのライプニッツ係数を控除する必要があります。
基礎収入
基礎収入についても、休業損害や、特に後遺障害逸失利益の場合とほとんど同様に考えられます。
詳しくは後遺障害による逸失利益のページをご参照下さい。
生活費控除率
生活費控除率とは、被害者の死亡により、将来の収入から支払われるはずであった被害者の生活費の支払を免れるため、将来の生活費相当分を控除する一定の割合をいいます。
生活費控除については、被害者の家族関係・性別・年齢などに応じて逸失利益全体に対して一定の割合を控除する方式がとられています。
生活費控除率の基準
原則として、一家の支柱及び女性は30%〜40%、その他は50%とします。ただし、年少女子につき,男女を合わせた全労働者の平均賃金を採用する場合は,生活費控除率を45%として算定します。
*一家の支柱とは,被害者の世帯が主としてその被害者の収入によって生計を維持していた場合をいいます。
*賃金センサスを用いる場合は,死亡時の年度の統計を使用します。
計算例
被扶養者である妻と同居する事故前の年収600万円の男性会社員(40歳)が死亡した場合の死亡逸失利益
600万円(基礎収入) ×(1−0.4(生活費控除率)) × 14.6430(ライプニッツ係数)
=5271万4800円
※一家の支柱、扶養者1人のため、控除率は0.4です
小西法律事務所