成年後見制度とは④ ~補助について~
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者について、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人または検察官の請求に基づいて、家庭裁判所が補助開始の審判をしたときに補助が開始します(民法15条1項、876条の6)。
補助の制度は、比較的軽度の精神上の障害のある人を対象としているため、本人以外の者の請求による補助開始の審判には、本人の同意が必要とされています(民法15条2項)。補助人は、上記補助開始決定がなされた場合のほか、補助人が欠けたとき、および家庭裁判所が必要と認めたときに家庭裁判所によって選任されます(民法16条、876条の7第1項・2項)。
この補助人は、上述した成年後見人や保佐人と同様、1人でも複数でもよく、また法人が選任されることも認められています。
補助人の職務について
補助人には、被補助人の行為に対する同意権・取消権と特定の法律行為についての代理権のどちらか一方またはその双方の権限が付与されます。家庭裁判所は、上記の補助開始決定の申立てができる者または補助人もしくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為を行う場合に補助人の同意を得なければならないとする審判をすることができます。
この補助人の同意を要する被補助人の行為の範囲は、民法13条に規定されている行為の一部に限られます(民法17条1項)。また、被補助人以外の者の請求によって上記の審判が請求されるときは、被補助人本人の同意がなければそのような審判をすることができません(民法17条2項)。
補助人の同意を必要とする行為について、被補助人が補助人の同意なしに行った場合には、被補助人または補助人によって取り消すことができます(民法17条4項)。また、家庭裁判所は、補助開始の審判を請求できる者、補助人または補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を与えるという内容の審判をすることもできます(民法876条の9第1項)。
この代理権付与の審判をする場合も、被補助人以外の者からの請求によるときは、被補助人本人の同意が必要とされています(民法876条の9第2項、876条の4第2項)。
補助人は、補助の事務を行うにあたっては被補助人の意思を尊重し、かつその心身の状態および生活の状況に配慮しなければなりません(民法876条の10第1項、876条の5第1項)。
また、補助人がその事務を行うにあたっては善良なる管理者の注意義務を負います(民法876条の10第1項、644条)。
なお、補助人が被補助人に代わってその居住用不動産を処分するときは家庭裁判所の許可が必要になるなど、成年後見の規定の準用があります。
臨時補助人・補助監督人について
補助人と被補助人との利益が相反する場合には、補助監督人がいるときにはその補助監督人の同意が、補助監督人がいないときには臨時補助人の選任が必要となります(民法876条の7第3項)。家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人またはその親族、もしくは補助人の請求により、または家庭裁判所の職権によって、補助監督人を選任することができます(民法876条の8第2項)。この補助監督人は任意の機関で、人数は1人でも複数でもよく、法人を選任することもできます。
補助の終了
補助が終了する場合も絶対的終了と相対的終了とがあります。補助の絶対的終了原因は、被補助人の死亡および補助開始審判の取消しです。相対的終了原因は、補助人の死亡、補助人の辞任。解任および欠格事由の発生です。
小西法律事務所