【解決事例】推定されない嫡出子の親子関係不存在確認手続
事案の概要
母Aは、Bと、平成25年2月頃まで交際していましたが、交際を解消することとなりました。もっとも、その頃、Bとの間の子Cの妊娠が発覚しました。
また、母Aは、子Cの妊娠が発覚した頃、Dとの交際を開始しました。その後、平成25年9月に母AとDは婚姻し、その後、平成25年12月に、子Cが生まれました。そのため、母Aは、子Cの出生届を提出しましたが、子Cの父親はDとされました。
しかしながら、その後、平成28年4月、母Aは、Dと離婚することになりました。さらに、その後、母Aは、Bとの交際が再開し、Bと再婚するに至りました。そのため、現在、母A、子Cの実の父親であるB、子Cは一緒に暮らしております。
母Aは、戸籍上Dとなっている子Cの父を、生物学上の父であるBに訂正したいと考え、どのような方法があるのか、相談に来られました。
手続の流れ
民法では、
1 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
第772条
2 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
と規定されています。
また、判例・実務においては、婚姻後200日未満に出生した子であっても、婚姻中の父母の間に生まれた子は、すべて嫡出子とされることとなります(「推定されない嫡出子」といいます。)。
そのため、母の婚姻中に出生した子については、原則、母の夫との間に、法律上の親子関係が発生します。
本件では、子Cは、母AとDとの婚姻中に出生したため、生物学上の父ではないDとの間で、法律上の親子関係が生じました。
そして、子Cと生物学上の父であるBと間に法律上の親子関係を形成するためには、まず、子CとDとの間の法律上の親子関係を解消させる必要があります。
この点、推定されない嫡出子について、子と父の親子関係を否定するためには、親子関係不存在確認訴訟を行う必要があります。
なお、親子関係不存在確認訴訟は、原則、調停を前置する必要があります。
本件では、Dは、親子関係不存在確認の調停を行ったとしても、調停に出席する可能性がありませんでしたので、調停手続きをとることなく、親子関係不存在訴訟の手続をとりました。
また、親子関係不存在確認訴訟の手続において、子Cは、母AとDの交際が開始する前に妊娠が発覚した子であること、子CとBとの間のDNA鑑定において、実親子関係が確認できることなどを主張しました。
その結果、子CとDとの間の親子関係の不存在を裁判所で認めてもらうことができまし
その後、Bの認知によって、子CとBとの間に、無事、法律上の親子関係を形成することができました。
コメント
本件では、子Cは、婚姻後200日未満に出生した推定されない嫡出子であったため、親子関係不存在確認請求訴訟を起こすことができ、子CとDの親子関係の不存在を認めてもらうことができました。
仮に、子Cが推定される嫡出子であった場合は、子CとDとの親子関係を否定するためには、D自身が、子Cの生まれたことを知った日から1年以内に、嫡出否認の訴えの手続きをとる必要があるため、注意が必要です。
※掲載されている解決事例は、実際に小西法律事務所で取り扱った事件が基になっていますが、掲載・解説の都合上、事情を抽象化するほか、婚姻日、出生日等の日付を変更しております。
弁護士 田中 彩
- 所属
- 大阪弁護士会
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