コラム

2021/05/10

不貞行為による慰謝料請求の基礎知識 ~その3~

慰謝料を請求するには

 不倫(不貞)をされた当事者は、不倫をした結婚相手及び不倫相手に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。

 民法は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(民法709条)と規定しています。

 この規定に基づく責任を、不法行為責任といいます。

不法行為の成立要件

  1. 故意又は過失
  2. 他人の権利又は法律上保護された利益の存在
  3. ②を侵害したこと
  4. 損害の発生
  5. ③と④との因果関係があること

配偶者に対する請求

 夫あるいは妻が、結婚相手以外の者と肉体関係を持ち、あるいは、それに近い関係を有する「不貞」を行った場合、その行為は、不貞をされた妻あるいは夫の「法律上保護された利益」を侵害するものとして、不法行為に該当するとされています。

 したがって、不貞をされた妻あるいは夫は、不貞をした夫あるいは妻に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求することができます。

不貞行為の立証

 結婚相手に対する請求において、問題となるのは、本当に「不貞」があったのか、という点です。

 「不貞」とは、結婚相手以外の者と肉体関係を持つこと、あるいは、それに近い関係を有することです。

 肉体関係を持つことは、白昼堂々と行われるものではなく、密室で行われるのが通常です。

 したがって、肉体関係を持ったことが明らかとなる証拠がある場合は別として、一般的には、肉体関係があったことを立証することは難しいといえます。

 しかしながら、不可能ということはなく、様々な証拠を積み上げ、関連づけることによって、立証に至ることは可能です。

不貞相手に対する請求

 最高裁判所の判例によれば、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両者の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。」(最判昭和54年3月30日民集33巻2号3030頁)として、不貞をした相手方に対する慰謝料請求を肯定しています。

不法行為の成立要件

 先に説明したとおり、不法行為に基づく損害賠償を請求するためには、

  1. 故意又は過失
  2. 他人の権利又は法律上保護された利益の存在
  3. ②を侵害したこと
  4. 損害の発生
  5. ③と④との因果関係があること

が必要です。

不貞行為の立証

 本当に「不貞」があったかどうか、という点が問題となることは、不貞をした結婚相手に対する請求と同じです。

 様々な証拠を積み上げ、関連づけることによって、不貞行為の立証を行います。

不貞相手の故意・過失

 不貞相手に対する慰謝料請求において固有の問題は、①故意又は過失があったかどうかという点です。

 「故意」とは、ある事実を認識し、認容していることをいい、「過失」とは、ある事実を認識すべきであったのに、しなかったことをいうとされています。

 なお、ここで認識の対象とされている事実は、「相手に結婚相手がいる」という事実です。

 そのため、慰謝料請求をしたところ、不貞相手から、「肉体関係を持ったのは確かだけれど、既婚者だとは知らなかった。」という反論がされることがあります。

 不貞相手からこのような反論がなされた場合、出会った経緯、メールの内容、不倫をした結婚相手の年齢、風貌、社会的な地位、不倫をしていた期間、不倫当事者の関係性等を総合して、不貞相手の主張が信用できるのかできないのか、という判断をすることになります。

弁護士 田中 彩

所属
大阪弁護士会

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