コラム

2021/04/12

事業承継 ~M&A承継のメリット・デメリット

M&A承継とは

 事業承継とは、株式会社などの事業を第三者に継がせることをいいます

 M&A承継は、事業承継される会社とは別の会社が承継される会社を株式譲渡その他の手段を用いて買い取り、その事業を承継する方法のことをいいます。

 M&Aとは、合併(Merger)と買収(Acquisition)の頭文字で、会社そのものの売買という意味合いです。

 このM&A承継も、うまく活用できれば、これまで築き上げてきた事業を存続して承継させることができるとともに、現経営者も、事業承継の対価を受け取ることができるため、利用する企業も年々増加していっています。

M&A承継のメリット

買主側のメリット

① 事業成長に必要な時間の短縮

 買主サイドの企業において、新規事業を立ち上げるためにはマーケティング調査や技術開発、従業員の育成その他多くの時間やコストがかかります。

 これに対し、M&Aによって既存の事業を買収する場合、すでに出来上がって運営がなされている状態の事業や企業を買収することとなるため、こうした時間やコストを削減することができます。

② 新規事業への参入

 自社で全く新たに新規事業に参入するということになると、多大な労力と時間が必要になるだけでなく、さまざまなリスクが生じてしまいます。

 これに対し、M&Aによってすでに業績を上げている企業を買収することによって、リスクを低減、回避しつつ、新規事業参入を果たすことが可能となります。

③ 規模・シェアの拡大

 買収の対象となる企業が保有している技術、ノウハウ、取引先、流通網といった資産をM&A承継によって獲得することによって買手側の企業は事業規模・シェアの拡大を図ることができます。

 多くの企業にとって、持続的な成長のために、事業規模・シェアの拡大、また、それを通じての知名度、ブランド力の向上は重要な経営課題となりますが、M&A承継によって、一気に事業規模・シェアの拡大を図ることが可能となります。

④ 既存事業の強化

 新規事業への参入、あるいは、事業規模の拡大のためだけでなく、自社の既存事業を強化するため、M&A承継によって、他社の技術、ノウハウ等を取り込むことも可能です。

売主側のメリット

① 事業の継続と拡大

 M&A承継を活用することによって、後継者問題を解決して事業の継続、雇用の維持が可能になるとともに、それまでの自社の努力だけでは果たし得なかった事業拡大の機会を得ることが可能となります。

② 創業者の利益確保

 創業者はM&A承継を活用して自ら育て上げてきた事業を売却することによって、売却代金を得ることができます。

 創業者からすると、M&A承継によって、事業引退後の自己の生活を見据えて、これまで自分で発展させてきた事業にかかる最大の報酬を得ることが可能となります。

③ 廃業コストのカット

 会社を廃業する際には、それまで事業で活用してきた様々な機械、設備等の処分、在庫の処分等が必要となりますが、これら処分にはコストがかかってきます。

 また、廃業にあたって、各種手続き、税務処理に必要なコストもかかってきます。もちろん従業員に退職してもらうということになると、退職金その他のコストもかかってきます。

 これに対し、M&A承継が果たされれば、事業がそのまま継続されることとなるため、これら廃業にかかるコストをカットすることが可能となります。

M&A承継のデメリット

買主側のデメリット

① 想定していたシナジー効果が生じない

 売主側の企業と買主側の企業の間の溝が解消されず、その結果として、想定していたシナジー効果が生じないというデメリットが発生するリスクがあります。

② 人材の流出

 M&A承継の結果、統合後の労働条件・労働環境の変化、経営方針の変更、社内の軋轢等の結果、それまで社内で活躍していた優秀な人材が外部に流出してしまうというデメリットが生じるリスクがあります。

③ 簿外債務の発覚

 M&A承継以前に貸借対照表に記載されていなかったいわゆる簿外債務が後日発覚し紛争に発展するケースがあります。

売主側のデメリット

① 取引先への悪影響

 M&A承継の結果、社内の担当者が変更したり、契約条件に変更をきたした場合、その結果として、それまで良好な関係を築き上げてきた取引先との関係が悪化してしまう可能性があります。

② 労働者の労働環境等の変化

 M&A承継により、それまでの従業員の労働環境や労働条件に変更が来される可能性があり、その場合、従業員のモチベーションが低下したり、生産性が低下したりする可能性があります。

③ 売手側企業と買手側企業の融合が果たされない

 売手側企業と買手側企業の文化が大きく異なる場合、企業文化の融合に時間がかかり、社内に混乱が生じる可能性があります。

弁護士 小西 憲太郎

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事

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