コラム

2021/02/01

過去の借金の請求について ~債権回収会社・支払督促~

債権回収会社から過去の借金に関する手紙が届いた

  最近、債権回収会社から「ご連絡」「法的措置予告通知」「訪問予告通知」等のタイトルで、最終弁済から5年以上前の借金の支払いを求める手紙が届いた、どう対応すればよいか、という相談が増えています。

債権回収会社とは

 債権回収会社とは、法律によって債権の回収業務を認められている会社です。

 通常、債権の回収は、お金を貸した金融機関自らが行いますが、滞納が続いたり、連絡が取れなくなった債務者に対する債権について、金融機関が、債権回収会社に債権の回収業務を委託したり、債権を譲渡したりすることがあるのです。

消滅時効

 借りたお金は返さなければならないのが原則ですが、最後弁済から5年が経過しているときは、消滅時効が完成し、お金を返さなくてもよくなる場合があります。

 もっとも、最終弁済から5年経過すれば直ちにお金を返さなくてよくなるという訳ではなく、時効の援用(時効の効果を確定的に発生させる意思表示)をしなければなりません。

時効の更新

 消滅時効の援用を行う前に、債務承認をしてしまうと、債務承認の時点からさらに5年経過しないと時効が成立しません。

 債務承認とは、「債務を認めること」であり、借金の一部の支払いや、分割弁済の協議もこれに該当します。

支払督促

 債権回収会社からの手紙は、その内容が最終弁済から5年以上経過している債権の請求であるならば、消滅時効が成立している可能性があるので、時効の援用を検討するとよいでしょう。

 しかし、時効の援用を行うまでは、債権は消滅しません。そのため、債務者が対応を怠った場合、債権回収会社は、裁判所に対し、支払督促の申立を行うことがあります。

 支払督促とは、貸金の返還や売掛金の支払いをしない等の相手方に、簡易裁判所を通じて、支払を督促してもらう手続きです。

 このような書面が裁判所から届いたにもかかわらず、対応を怠ってしまうと、預金や給料が差し押さえられてしまう可能性がありますので、注意しなければなりません。

 既に消滅時効が完成している債権の支払いを求めて支払督促がなされた場合は、異議申し立てを行う必要があります。異議申立てを行った場合、通常訴訟に移行し、その訴訟において、消滅時効の援用を主張して、請求を拒むことができます。

まとめ

 債権回収会社から、最終弁済が5年以上前の債権の支払いを求められた場合は、時効の援用を行うことによって、お金を返さなくともよくなる場合があります。

 もっとも、時効の援用を行う前に、債権回収会社と連絡を取り、分割弁済の約束や債務の承認をしてしまった場合、時効の主張ができなくなってしまう可能性があるので注意が必要です。

 また、裁判所から届いた書面にはきちんと対応しなければなりません。

 時効の援用や、支払督促が申し立てられた場合の対応は、専門的な手続きを含みますので、弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士 白岩 健介

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事

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