コラム

2024/09/30

協議離縁の取消しを求める手続について

 詐欺または強迫によって協議離縁をしたものは、その協議離縁の取消しを求めることができます。

 本コラムでは、協議離縁の取消しを求める手続きについて解説いたします。

協議離縁の取消しを求める調停

 協議離縁の取消しを求める手続は、特殊調停事件とされ、調停前置主義の対象となります。

 そのため、協議離縁取消しの訴えを提起するためには、原則としてまずは家庭裁判所に調停の申立てをしなければなりません(家事事件手続法257条1項)。

  • 管轄裁判所
    相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または、当事者が合意で定める家庭裁判所
  • 収入印紙
    1200円
  • 予納郵券
    申立を行う家庭裁判所により取扱金額や内訳が異なるため、管轄の裁判所にお問い合わせください。
  • 添付書類
    ①当事者の戸籍謄本
    ②事案によっては、事実関係を証明する書類

合意に相当する審判

 協議離縁の取消しを求める調停において、「離縁の取消しの審判」を受けることについて当事者が合意し、当事者双方が取消原因(詐欺または強迫によって離縁がされたこと)について争わない場合、家庭裁判所が事実を調査した上で、合意を正当と認めるときは、「合意に相当する審判」をすることができます。

 この審判が確定すると、協議離縁の取消しを命ずる確定判決と同一の効力を生じます。

 合意に達しない場合は、調停は不成立となり、訴訟を提起することになります。

協議離縁の取消しの訴え

訴訟要件

原告適格

 通常、原告適格を有するのは詐欺または強迫によって協議離縁をした者になります。

・夫婦共同縁組の場合

 未成年者を養子とする夫婦共同縁組の場合、養親夫婦の一方が詐欺または強迫によって協議離縁をした場合でも、養親夫婦が共同で原告となると考えられています。また、この場合、離縁全体を取り消すことができると考えられています。

 養子が未成年者ではない夫婦共同縁組の場合には、詐欺または強迫によって離縁をした者のみが原告となります。

被告適格

 通常、離縁の相手方が被告となり、相手方が死亡している場合は検察官を被告とします。

・夫婦共同縁組の場合

 養親夫婦が未成年の養子と協議離縁の取消しの訴えを提起する場合は、養子を被告とします。また、養子が協議離縁の取消しの訴えを提起する場合は、養親夫婦を共同被告とします。

 養子が成人の場合は、詐欺または強迫を受けた者が、自己に関する協議離縁のみを取り消すことができると考えられます。なお、被告は離縁の相手方となります。

出訴期間

 詐欺または強迫によって協議離縁をした当事者が、詐欺を発見した時、または、強迫を免れた時からそれぞれ6ヶ月を経過したときは、協議離縁の取消権は消滅します。

・追認した場合

 詐欺または強迫によって協議離縁をした当事者が、詐欺を発見し、または、強迫を免れた後に協議離縁を追認したときも、協議離縁の取消権は消滅します。

協議離縁の届出

 協議離縁の取消しの前提として、協議離縁の届出がなされたことが必要となります。

要件事実

 縁組当事者の一方または双方が、他人の詐欺または強迫によって協議離縁の届出をしたことが請求原因となります。

 なお、養子が15歳未満のために養子の離縁後に法定代理人となるべき者が離縁の協議をした場合、詐欺または強迫を受けたかどうかは、法定代理人となるべき者について判断します。判断の対象は養子ではありませんので注意が必要です。

判決の効力

 協議離縁の取消しを命ずる判決が確定すると、協議離縁は遡及的に効力を失います。つまり、縁組は離縁後も継続していたことになります。 

 確定判決は、請求容認・請求棄却いずれの判決も、第三者に対しても効力を有します。

 離縁を取り消す旨の確定判決に基づいて、訴えを提起した者が、判決が確定した日から1ヶ月以内に戸籍の訂正を申請します(戸籍法116条)。

まとめ

 養子縁組の取消しについてお悩みの方は、ご相談いただければと思います。

弁護士 田中 彩

所属
大阪弁護士会

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