【解決事例】痴漢冤罪事件
事案の概要
痴漢行為を行ったとして逮捕・勾留されてしまったが、準抗告の申立てを行い、身体拘束を解放し、弁護活動の結果、嫌疑不十分として不起訴処分となった事例。
手続の流れ
依頼者Xは、4月26日の朝、満員電車の中で痴漢行為を行ったとして、電車を降りてすぐに駅長室に連行され、駆け付けた警察によって逮捕されてしまいました。
依頼者Xは、痴漢行為を行っておらず、一貫して事実を否認していたところ、4月27日、勾留請求されてしまいました。
そこで、依頼者Xは、当番弁護士の要請を行い、弊所担当弁護士が警察署に初回接見に行きました。
依頼者Xの言い分、当時の電車の状況、依頼者の社会的地位・家族構成等から、依頼者Xは痴漢行為をしていないものと判断し、また勾留の要件がないものとして、依頼者Xの身体拘束を解放すべく弁護活動を行いました。
そして、5月1日、次の資料を添えて、裁判所に対し、勾留許可決定に対する準抗告を申立てました。
- 電車の時刻表・・・依頼者が痴漢目的で電車に乗った訳ではなく通勤目的で電車に乗ったことを示すため。
- 電車内部の状況を図示したもの・・・当時の電車内部の状況からすると被害者Yが主張している痴漢行為を依頼者Xが行うことは不可能だったことを示すため。
- 家族の身元引受書・・・依頼者Xが勾留から解放されたとしても、家族が責任を持って出頭を確保する旨の書面。
- 家族の上申書・・・家族関係が円満であり、痴漢をするような人ではないことを示すため。
- 会社代表の上申書・・・依頼者Xの勤務態度が良好であることを示し、また、捜査機関からの呼び出しがあれば会社としても休みを取得させ、出頭を確保する旨の書面。
- 依頼者本人の誓約書・・・捜査が終了するまで、被害者Yと接触しないこと、電車の乗車時間を変更して被害者Yと偶然に接触する可能性を極力回避すること、捜査機関からの呼び出しがあれば必ず応じること等を約束する内容の誓約書。
準抗告申立の翌日、裁判所は、以上の資料を踏まえ、原裁判を取消し、勾留請求を却下するとの決定を出しました。その結果、依頼者Xは身体拘束から解放されました。
そして、弁護活動の結果、捜査機関から数回の呼び出しを経た後、嫌疑不十分で不起訴処分になりました。
コメント
本事案では、家族と会社の協力を受けることができたことによって、依頼者Xの社会的地位を、本人の供述以外からも裏付けできたことが、身体拘束の開放に繋がったと思います。
痴漢行為(迷惑防止条例違反)は量刑が比較的軽微ですが、勾留が続けば被疑者は仕事を休まざるを得ませんし、家族にも多大な迷惑(介護や子育て等ができない)をかけてしまいます。
そのため、裁判所に対しては、被疑者の社会的地位を詳細に説明し、勾留が続けば多大な損害を被る可能性があることを上申することが重要です。
また、近年の痴漢事件では、繊維鑑定、DNA鑑定、指紋鑑定等の化学捜査が行われることが多いです。真に痴漢を行っていないのであれば、これらの化学捜査には応じる姿勢を示すことも身体拘束の解放に繋がる要因になります。
※掲載されている解決事例は、実際に小西法律事務所で取り扱った事件が基になっていますが、掲載・解説の都合上、事情を抽象化するほか、逮捕日、勾留請求日等の日付を変更しております。
弁護士 白岩 健介
- 所属
- 大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事
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