訴訟による交通事故解決 ~交通事故の訴訟の概要~
交通事故をめぐる紛争については、その多くが示談交渉で解決しています。また、さまざまな無料の裁判外紛争解決機関(交通事故紛争処理センターなど)を利用することもできるので、訴訟提起を要する事案は、損害について重大で深刻な対立がある場合といえます。
実際の交通事故に関する訴訟では、死亡事故や高度の障害を負う重大事故で保険会社の提示する示談額と被害者の考える損害賠償額が大きく隔たっている場合や、多数の加害者が存在しその負担割合の決定が困難な場合、事故原因・事故態様・事故と損害との因果関係・過失割合についての大きな対立がある場合など、非常に複雑な事件が多いです。
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訴訟を提起する前に
交通事故をめぐる紛争については、様々な被害者救済制度がありますので、訴訟の提起の前にそれらの制度を利用することを検討することが一般的です。
なかでも、自賠責保険の被害者請求(自動車損害賠償保障法16条1項)によって加害車両に付保された自賠責保険会社に対し、自賠責保険の保険金の支払請求をすることは重要です。
自賠責保険では、被害者側の過失については重大な過失がない限り過失相殺による保険金の減額がなされず、事故と損害の因果関係が明らかでないとしても死亡や後遺障害による損害については減額がされるものの保険金が支払われるなど、被害者救済に資する制度となっています。
また、交通事故について紛争となりやすい自賠責保険の後遺障害等級認定については、異議申立ての制度があります。
さらに、自賠責保険に関しては、自賠責保険・共済紛争処理機構という組織で専門家による調停をしてもらうことができます。
また、裁判外紛争解決機関(日弁連交通事故相談センターや交通事故紛争処理センター)での相談・示談あっ旋を受けることもできます。
これらの制度を利用して出された解決策によって、迅速で簡易に紛争を解決することも考えられます。
訴訟の流れ
原告による訴状の提出
訴訟は、原告が裁判所に訴状を提出することから始まります。
裁判所による裁判の期日の指定
訴状を受け取った裁判所は、その不備がないか確認した上で、第1回裁判の期日を指定します。訴状が提出された日から、1~2か月程度の後の日時が指定されることが多いです。
その後は概ね1か月~1か月半に1回程度のペースで期日が開催されます。
口頭弁論期日・準備書面の提出・証拠調べ
第1回期日では、被告が、原告の訴状に対する、答弁書を提出します。
第2回以降の期日では、主に、原告と被告が、準備書面(主張反論を記載した書面)と証拠を提出し合う形で進みます。必要に応じて鑑定・検証などによって主張する事実を裁判所が確認する手続を行い、また、証人や当事者の尋問が行われます。
裁判(訴訟)で主張したいことは、準備書面に記載して提出しなければなりませんので、訴訟では、準備書面をきちんと作成することが重要になります。また、準備書面で主張した事実を裏付ける証拠を提出することも重要です。
判決
原告・被告の主張が一通りなされたら、裁判所が、判決を下して、訴訟は終了となります。
訴訟上の和解
交通事故における損害賠償請求訴訟事件では、判決が下される前に、裁判所から和解案を提案されることが多く、和解で訴訟が終了することも多いです。
小西法律事務所